◇ ことば 遊び ◇

創業者名を屋号に


 毎週土曜日夕方6時からのテレビ朝日「人生の楽園」(2018.6.23放送)を観ていて、屋号のセンスある付け方に感心してしまいました。それは「山石土平」といううどん屋の屋号です。由来は下の表の中に記載していますので読んでみてください。

 これを機会に創業者名を屋号にしているものを手当たり次第に集めてみました。ひねったものあり、そのまんまのものありといろいろでした。

屋号・社名
(業種)
創業者名名付けの由来
■名前の変形
イトーヨーカ堂
 (小売業)
吉川敏雄
(よしかわ としお)
創業者が東京・浅草で創業した「羊華堂(ようかどう)」が会社の源流。吉川の甥である伊藤譲の「伊藤」と「羊華堂」を組み合わせて『イトーヨーカ堂』とした。
内田洋行
 (卸売業)
内田小太郎
(うちだ こたろう)
内田」は創業者の姓からとった。「洋行」は中国語である。中国で「外国人の経営する店(会社)」のことを指し「ヤンハン」と読む。明治43年に中国の大連で南満州鉄道に測量機械や文具を納入する会社を興したことからこの社名が付いた。
「マジックインキ」を発売した会社。
江崎グリコ
 (製菓業)
江崎利一
(えざき りいち)
カキの煮汁からグリコーゲンを採取し、それをキャラメルの中に入れた栄養菓子「グリコ」を製作したのが始まり。
江崎グリコーゲン=江崎グリコ。
加ト吉
 (食料品メーカー)
加藤吉次郎
(かとう きちじろう)
屋号を「加藤」と「」から「かときち」としていた。
吉次郎が病で倒れた後を、まだ15歳だった孫の義和が継ぎ、本格的な水産加工業に乗り出して、昭和31年に「加ト吉水産」の名で創業する。
「加ト吉」と改称したのは冷凍食品事業を拡大させた昭和39年だった。
その後「かとよし」と読まれかねないということで、昭和47年にCIを導入し「カトキチ」を統一ブランド名に定めた。
コーセー
 (化粧品メーカー)
小林孝三郎
(こばやし こうざぶろう)
孝三郎の「孝=KO」と経営理念の根本である誠実の「誠=SEI」を組み合わせたもの。
登録出願も当初はKOSEIで行われたが、後に語尾の「I」が取られKOSEに改められた。
サントリー
 (酒類・飲料メーカー)
鳥井信治郎
(とりい しんじろう)
現在のサントリーの前身「寿屋」の土台を築いた赤玉ポートワイン(明治40年発売、現在の赤玉スイートワイン)の「赤玉」すなわち 太陽(サン)の下に自分の名字・鳥井(トリイ)を結び付けて命名したもの。
シダックス
 (サービス業)
志太勤一
(しだ きんいち)
名字・志太(シダ)と無限を意味するX(エックス)を掛け合わせて付けられた。
タカラトミー
 (玩具メーカー)
富山栄市郎
(とみやま えいいちろう)
タカラトミーは大手玩具メーカーであるタカラとトミーが合併することによって誕生した。
「トミー」は創業当時、創業者の富山栄市郎氏の姓を冠して「富山玩具製作所」でしたが、 生産量の半分以上をアメリカに輸出しており、現地では「トミヤーマ」と呼ばれており、日本でも覚えやすく親しみ易い名称にしようと「富山玩具製作所」から「トミー」に改称。
タカラ」は創業地が「東京都葛飾区宝町」であることと、玩具が子供たちの「宝物」だであることから付けられた。
ニトリ
 (インテリア小売業)
似鳥昭雄
(にたとり あきお)
「似鳥」は「にたとり」と読むそうですが非常に読み辛い。その上初対面では特に「にとり」と読まれてしまうそうで、当の社長本人も気にしていたと言う。
そこでその間違えられた呼び名「ニトリ」をそのまま社名とした。
福助
 (繊維製品メーカー)
辻本福松
(つじもと ふくまつ)
幕府御用達の綿糸商の家に生まれた辻本福松が、大阪・堺に自分の名前から一字とって「丸福」を屋号とする足袋装束問屋を開いたのは明治15年のことだった。
事業は順調に進んだが、明治32年に和歌山の「丸福足袋坂口茂兵衛」から、「丸福の商標は自分の方が先に使用している」と訴えられ、福松は裁判で負けてしまう。
翌年、福松の長男の豊三郎に子供が生まれ、祝いのために豊三郎は伊勢神宮に参拝に出かける。その帰り道、一軒の古道具屋で古びた福助人形を見つけた豊三郎は、天啓が下ったように新しい商標にしようと決心する。
社名に福助を冠して「福助足袋本店」としたのは大正4年、さらに大正8年に「福助足袋」に、昭和39年に現社名に改称した。
ヨネックス
 (スポーツ用品メーカー)
米山 稔
(よねやま みのる)
「米山(ヨネヤマ)」という名称が外国人にとって、発音し辛い音である事から「ヨネヤマ」の「ヨネ(YONE)」に未来の可能性を表す「X(エックス)」を付けて作られた造語。
JINS!
 (メガネ通販)
田中 仁
(たなか ひとし)
田中「仁」の名前から。
 
■名前のカタカナ化
オークワ
 (小売業)
大桑 勇
(おおくわ いさむ)
 
カシオ計算機
 (電気機器メーカー)
樫尾忠雄
(かしお ただお)
 
マツモトキヨシ
 (薬店)
松本 清
(まつもと きよし)
 
ヤマハ
 (楽器・半導体・音響機器・
 スポーツ用品・自動車部品製造発売)
山葉寅楠
(やまは とらくす)
 
 
■名前の反転形
ジュンク堂
 (書店)
工藤恭孝
(くどう やすたか)
創業者の父親の名前「工藤 淳」を反転させたもの。
 
■名前の英語化+反転形
ブリヂストン
 (ゴム製品メーカー)
石橋正二郎
(いしばし しょうじろう)
創業者の名前にちなみ英語の「ブリッヂ」(橋)と「ストーン」(石)を合成したもの。 姓を直訳して「ストーンブリッヂ」では語呂が悪いので、逆さにして「ブリヂストン」になったという。
またその当時タイヤの世界的ブランドだったファイアストンのような一流企業になりたいという思いも込められた。
 
■名前の短縮形
イトーキ
 (オフィス家具)
伊藤喜十郎
(いとう きじゅうろう)
設立時の社名である「伊藤喜」商店をカタカナ表記にしたもので「伊藤喜」は創業者伊藤喜十郎の氏名を縮めたもの。
伊藤忠商事
 (卸売業)
伊藤 忠兵衛
(いとう ちゅうべえ)
 
塩野義製薬
 (医薬品メーカー)
塩野義三郎
(しおのぎ さぶろう)
 
山善
 (卸売業)
山本猛夫
(やまもと たけお)
山本家の世襲の名前である「左衛門」を短縮。
 
■名前の複合系
伊勢丹
 (百貨店)
小菅丹治
(こすげ たんじ)
婿養子に行った米穀問屋の屋号「伊勢又」と「治」を合わせた。
小岩井乳業
 (乳業メーカー)
日本鉄道会社副社長
 野義真
三菱社社長
 崎彌之助
鉄道庁長官
 上 勝
創業メンバーの名字の先頭を並べた。
コナミ
 (情報・通信業)
上月景正(ko)
仲真良信(na)
宮迫龍雄(mi)
創業メンバーの名字の先頭を並べた。
松竹
 (情報・通信業)
 
白井次郎
大谷次郎
創業メンバーの名前の先頭を並べた。
三越
 (百貨店)
三井高利
(みつい たかとし)
三井高利による「越後屋」の開店は延宝元(1673)年、商家としての三井家の起源はさらに古く、高利の祖父の代、大坂夏の陣が起きた元和元(1615)年にまで遡ることができる。
三井家は代々、越後守を名乗る伊勢松阪の武家だったが、高利の祖父の代に武門を捨てて酒屋を開業したのだった。
店は「越後殿の坂本 九や」と親しみを込めて呼ばれた。これが高利が江戸日本橋に呉服屋を出したときに屋号を「越後屋」としたいわれである。
ところが明治5年になって、三井家が越後屋を分離するという出来事が起ったのである。このとき越後屋の当主はやむなく「井家」と「後屋」からそれぞれ頭文字の一字を採って、三井得右衛門から三越得右衛門へと姓を変えることになった。これが「三越」という名前の起こりである。
明治37年には店名も当主の姓を採って「三越呉服店」と改められた。
YKK
 (非鉄金属)
吉田忠雄
(よしだ ただお)
頭文字である「Y」と旧社名の「吉田工業株式会社」の英文表記。
 
■漢字の置換形
湖池屋
 (食料品販売)
小池和夫
(こいけ かずお)
創業者の出身地が諏訪湖のある長野県諏訪市であったことから「諏訪湖のように会社も大きく成長させたい」との願いを込め、小池の「小」を「」に置き換え湖池屋とした。
美津濃
 (スポーツ用品メーカー)
水野利八
(みずの りはち)
「将来、店が発展した時に、わしの子孫以外から立派な人材が出ることも考えられる。その時、わしの個人名の水野では会社名としてふさわしくない」
創業者・水野利八は、社名を自分の姓を採った「水野」ではなく、当て字で「美津濃」とした理由をこう語っている。
「美津濃」の当て字は、利八の故郷が岐阜県大垣市で、旧地名が「美濃」であったことと大垣の実家が木材問屋で、木材運搬の港を「津」と呼んでいたことにちなんでいる。「」と「」の間に「」が挟まれているが、この「津」は自分の会社に人が集まる港という意味も込められている。
山之内製薬
 (医薬品メーカー)
山内健二
(やまのうち けんじ)
社名の「山之内」は創業者・山内健二の姓にちなんだものだが、「山内」のままでは「ヤマウチ」とも「ヤマノウチ」とも読まれるため、混乱を避けて「之」を挟んだ社名とした。
2005(平成17)年4月に藤沢薬品工業と合併しアステラス製薬が発足した。
 
■漢字の分解形
にんべん
 (食料品メーカー)
高津伊兵衛
(たかつ いへえ)
屋号は出身地と自分の名前から「伊勢屋伊兵衛」とした。暖簾印(商標)として伊勢屋と伊兵衛の「伊」から「イ(にんべん)」、商売を堅実にするために「¬(かね印)」を組み合わせた「かねにんべん」を考案した。この商標が現在の社名の起源である。
江戸の庶民はいつしかこの店を「伊勢屋」と呼ぶよりも「にんべん」とか「鰹節のにんべん」「にんべんの店」と呼ぶようになっていた。
うどん馳走 山石土平 (やまいしどへい)
 (飲食業)
岩坪健一
(いわつぼ けんいち)
「山石土平」とは名字「岩坪」の漢字を各部位に分解したもの。
屋号・社名
(業種)
創業者名名付けの由来